真珠懐かし写真館
2010.11.25
突然ですけれど、わたくしは笑顔が苦手です
昔撮ったブロマイドはいつも、強張り不自然な笑みを浮かべたわたくし
若しくは、元来の蛇のやふなまなこだけが爛々と鋭く光るわたくし
どうにもこうにも、当世流行の媚びるやふな魅惑の表情には程遠く、
折角の黒目がちなおめめは、笑顔により宇宙人如く真っ黒に映る始末…
過去の時代の遺物のやふなそんなわたくしが、好んで眺める古写真
とくに好みなのが、明治~大正期の所謂「横浜写真」
横浜写真とはなんぞや、、、、
開港間もない横浜で、外国人の観光土産として輸出用に作られた写真。
風景、風俗、美人写真などがアルバム仕立てで販売された模様。
明治十~三十年代にかけて何十万冊も輸出された。
セピアに部分着色された朧気な色合いがまた郷愁を誘うじゃありませんか
そんな横浜写真も満載の『幕末・明治のおもしろ写真(石黒敬章著)』
外国人が想像する架空の日本の姿が兎に角ヤラセ満載で造形されて居ます
着物の着方が可笑しかったり 中華風に味付けされたりなんてのはザラ…
中には、何故か屋形船の屋根の上に正座する人の写真などクスリとするものも
そんな中、興味深い無名の少女のブロマイドが御座いました、、、
筆者が命名したるはその名も「笑子(えみこ)ちゃん」
横浜写真でも人気があったやふで、何種類もの笑顔を後世に残してくれました
明治期の人々にとり、写真とは記念すべきハレの日に写真館で撮る厳粛なもの…
であるからして、笑い顔なぞで映るとは不謹慎極まりないとされており
笑顔どころか微笑んだ表情も殆ど現存していないそうな… その中で際立つ、
さしたる美人でないが笑子ちゃん(仮称)の弾けんばかりの屈託ない笑顔!
ナントマア、愛くるしい… 日本発の「はい、チーズ」
下の仏蘭西ブロマイドにも引けをとらない堂々たる恵比須顔
のちに大正期に入ると、写真も普及しぐっと笑顔のブロマイドは増えるさふな
その後日本人の笑顔の進化はめざましく、最早アイドル顔負けの素人も多い今日
魂が吸い取られると信じる人もまだまだ多かった明治期において
映写機に向けられた笑子ちゃんの微笑みは、わたくしに密やかな勇気をくれました


Pearl