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服飾史 ~モティーフ篇~



気付けば神無月も終盤、、 霜月 そして「忙しさの余り師匠さへ走る」師走もさふ遠くない時候となりました

ジングルベルの鳴り響く頃になりますと、クリスチヤンであるや否やに関わらず

頭を悩ませながら冬空を彷徨い歩くお方の多いこと・・・  さふ、贈り物に思い惑う季節の到来であります




そんな迷える子羊 いや皆様のほんの僅かでもお手伝いが出来ましたらと、今宵お送りしますは此方…

服飾史 ~モティーフ篇~ 、ご家族 恋人 お世話になったあの方に贈り物をなさる際のご参考になれば幸い

参考文献: 『ヴェネチアンビーズとコスチュームジュエリー』 『ニューヨークヴィンテージ』他




時は19世紀、、、 往時の女性達はジュエリーを装飾としてだけではなく、内面感情の表現として身に付けました
 
その代表がモーニングジュエリー(mourning:喪)で 愛する人の遺髪を編み込んだヘアージュエリーなるものも…

当時、喪の習慣は長く 一年目は黒ずくめ、二年目は場合により色物を着て良し等と厳しい戒律があったことから

19世紀のお品を見つけますと ジュエリーのみならず洋服も黒いものが多いのは ううむ…納得どすなァ


1890年代に入り、気持ちが死者に向かう時代から 新世紀を前に「生」を謳歌するムウドが高まりますと

世紀末から1910年代にかけて、ジャポニズムの影響を受けた自然主義のアール・ヌーボー様式の流行から 

蜻蛉や蝶をはじめとした動物や植物などを 柔らかな色合いで曲線的にかたどったジュエリーが持て囃されます


また、1930年代にかけ 都市型大衆文化の発達よりアール・デコ様式が流行しますと一転、

力強い色彩の対比による幾何学的や流線的、抽象的なモティーフのジュエリーが好まれ広く浸透致しました

ココ・シャネルの好敵手ともいわれたエルザ・スキャパレリが、ダリ始めとするシュールレアリズムの影響を受け

以下のような「SHOE HAT」はじめ 唇やピエロ等 奇想天外だと思われていたモティーフを装飾品に取り入れ、

モオドと芸術の前衛的かつ大胆なる融合とが始まったのも丁度この頃でありました


schiaparelli-shoe-hat_400.jpg


欧州特権階級の為のビジュー・ド・クチュールに始まり 後に大量生産が可能となったコスチュームジュエリーは

シャネルやスキャパレリの名と共に広く浸透、1920年代以降には仏蘭西のみならず欧州から亜米利加へと広がり

ことに亜米利加ではジュエリーの量産化が進んだ結果 全階級の女性がこれらを身に付けるに到りました


当時の亜米利加社会において ジュエリーをつけるにあたってはそれぞれに社会的意味を持っており、

例えば夫や婚約者が戦争に行ってしまった女性は胸にV字のピンを付け Victory(勝利)を表現したり

クリスマスシーズンを祝う為、選挙候補者を支持する意思表示の為など、様々なモティーフが生まれたのです…


また、1930年代後半にはルーズベルト大統領の愛犬であるスコッチテリアを象ったモティーフが大流行した結果、

このスコッチテリアは30年代モオドを代表するシンボルになるなど 政治動向とファッションも連動して参ります


我が国ではこの頃、千人針を縫い戦地に向かう夫や息子の腹に巻きつけていたことを思いますと、

意思表示の手段は国により随分異なれど 愛する人を気遣う心は同様であったのかと感慨深くなります


時は移ろい、1960年代後半に入りますとモオド界において男女の性差が一気に縮まると共に、

ベトナム戦争悪化による反戦ムウドの高まりから 平和の象徴:鳩やスマイル、ピースマークが街に溢れました



… とこのやふに、唄は世につれ 装飾は世相につれ、、  嗚呼、浮世の流れと見事に装飾品は移ろうもの哉

さてさて、一連の大まかなモティーフの傾向をお話しましたところで あの人への贈り物は何に致しましょか…

そこで、装飾品のモティーフの持つ代表的な意味合いをここでご紹介しておきませふ



星: 「良き星の下に生まれる」との言い回しの如く、輝く星は上がり調子のシンボルであり 神の恵みを象徴する古典的なお守りの意味合い
月: 古来より潮の満ち干きや暦に関係してきただけに、圧倒的な力を誇り 女性に立ち居振る舞いの美しさを与えるといふ
矢: キューピッドのシンボルであり、スピードの象徴。あなたを射止めたい、といふ意味合いも
翼: 天使、または守護神のシンボル。より高いレベルを望む気持ちの象徴、また片翼は恋人募集中の意味合いも
ハート: かつて心臓は「愛の宿る場所」と考えられたことからも、いつしか「愛」そのものを表すやふに
鍵: 閉ざされた心の扉を開ける意味合いも
王冠: 栄光と名誉、勝利を招く象徴、人間が到達できる最高位を表す
ベル: 超自然的な存在を音で招き寄せるとされ、魔よけの意味合いも
いかり: 十字架に似る形状から何時しか「神の救い」を表すように。また航海安全を約束する意味合いも
馬蹄: 魔を祓う強力な護符としての力を持つ。馬蹄がU字ならば神秘の力が増し、願い事を叶えてくれるとも
犬: 賢く忠実なベストフレンドであり、思い掛けなく訪れる幸せの象徴。目に見えない霊より守ってくれる意味合いも
鳥: 自由に飛び回る鳥は気持ちを伝える伝達者。バレンタインデイに鳥を恋人に贈る、といふ古い習わしも
蛇: 自分の尾をくわえてリング状になる蛇は、終わりのなき永遠を示すとも
スワン: 純粋性と神秘性、優美さや女性らしさの象徴。人目を忍んで訪れる恋人、といふ隠れた意味も
てんとう虫: 古い言い伝えでは、てんとう虫が身体の何処かに止まると幸運の前兆であり、赤が濃いほど幸運が増すとも
かたつむり: 慎重さや忍耐、地道な努力の象徴。かたつむりのあとは大地と空を繋ぐ天の川となり、天国へ魂を導くとも
蜜蜂: 愛の悦びと誘惑。もともと天国に住む虫だったと考える人もおり、欧州の女性に特に好まれる
魚: 生命と豊穣、再生を意味し 時にはキリスト教の洗礼を表すことも
金魚: 中国風水では赤い金魚は、裕福さや財産の象徴としてお目出度いものの象徴
四葉のクローバー: 襲い掛かる不運をはじき返すとも。綴りの中に「LOVE」の文字が入っている為 秘められた恋心のシンボルとも
薔薇: 愛の成就。特にゴールドの薔薇は全てが上手くいくことを暗示するとも
その他  蝶: 魂、  チェリー: 天国の果物、  リボン: 大切、  パンジー: もの想い 等々、、、




時には、複数の組み合わせにより意味を強調することもあったさふでありまして

例えば「王冠を載せたハート」を贈られたら (貴女は私の心の女王)・・・

また「ハートに錠前が重ねられて」居ましたらば (あなたを独り占めしたい)・・・

かつての恋人たちは小さきジュエリーに秘めた想いを込めて贈っていたといふから 奥ゆかしいではありませぬか

但し、蝙蝠など 亜細亜では吉兆とされるモティーフが欧米等では悪魔の手先とされることもあるゆへアシカラズ




本年は贈り物に無言のメッセエジを込めるも良し、頂いた贈り物から相手の心持を密かに察するもまた愉し

勿論、自分へのご褒美やお守りとして 装飾品に願いを込め纏うのもとびきり素敵なことに存じます

・・・サアテサテ、そろそろ皆様の心の準備は整いましたでふか、、、 





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